マイクプリと楽器入力
517のマイクプリは、権威あるTECアワードを獲得した Portico 5017 をベースにしています。最大66dBの入力ゲイン、位相反転とファンタムスイッチ、そして心地良いビンテージ感を演出する "シルク" 回路を装備します。別系統で用意された楽器アンプ(INST入力)は30dBのゲイン、グランドリフト、バリフェイズとスルー接続機能が用意されています。
ブレンド機能
517 を楽器用のシングルチャンネルデバイスとして活用する場合、DIとアンプサウンドを混ぜ、位相を整え、さらにコンプレッサーで処理を行って出力することができます。
詳しく解説すると、楽器の出力は直接 517 のINST入力につなぎ、アンプのスピーカーキャビネットに設置したマイクは500シリーズ用ラックの入力端子に接続します。そしてブレンドコントロールでふたつの信号のミックスバランスを決めます。一般的にこの接続で信号を混ぜた場合、信号伝達経路の違いや接続機器の性能によって時間差が生じ、結果として位相ズレによる信号の打ち消し効果が発生します。517 ではこの問題を解決するためにバリフェイズコントロールを装備しています。このテクニックはギターとボーカルを混ぜて出力する際にも有効です。
コンプレッサー
517 のコンプレッサーは 5017 同様、新設計の LDR (Light Dependent Resister) を使用したオプトカプラー仕様のコンプレッサーを装備します。このことでスレッショルドの設定ひとつで適度なコンプレッションと自動のゲインメイクアップを実現します。レシオは、2:1固定です。操作としては、適度な効果になるようにつまみをただ回すだけです。コンプレッサーが作動した際は、フロントパネルのLEDが点灯します。
バリフェイズ
517 は一般的なDIの位相反転を進化させたバリフェイズ機能を装備し、ダイアル操作で位相差を調整することができます。このコントロールはサウンドソースが同じ(かつ経路が異なる)ふたつの信号を混ぜる際に有効です。
例えばドラムのクローズマイクとオーバーヘッドを混ぜる際、どんなに慎重に設置したとしても、ミックスする際に音がスカスカした感じになることがあります。これは位相ズレによる打ち消し効果によるものです。この場合、バリフェイズを使用して位相ズレが解消されるポイントを探せば、信号は正しく、自然なものになります。
このテクニックは楽器を接続して、517 でふたつの信号を混ぜる際に大変有効です。特にベーシストの場合、DIとアンプのマイクサウンドを混ぜることは日常的に行われています。しかし一般的なDIやPAコンソールは位相反転のみを装備しているため、多くの場合、ミュージシャンは設定をエンジニア任せにしてしまいます。そして、エンジニアは正しい位置のマイク設置に時間を割かれます。517 を用いれば、ミュージシャンでも容易に正しいサウンドを得ることができ、エンジニアはミュージシャンを待たせることなく、次の作業に取りかかることができるのです。